もう一つの蔵王権現を参る 百名山・金峰山(表参道ルート・破線ルート)

YouTube 金峰山 前編

はじめに

2022年10月下旬、百名山金峰山(長野県川上村・山梨県甲府市、北杜市)に登ってきました。

五丈岩を望む


2022年の山と仏の配信では、
御嶽山、大峰山と「蔵王権現」ゆかりの山を登ってきました。

蔵王権現とは、山岳宗教である修験道の本尊となる仏さま。
大峰山山上ヶ岳(奈良県天川村)の湧出岩にて、修験道の開祖・役行者が感得したのが始まりです。
(詳しくは大峰山編をご覧ください)

大峰山で修行した修験者たちが全国各地の山を開いていきますが、
開山した際、山頂に蔵王権現をお祀りしていきました。
その山には「御嶽」「金峰」といった大峰山ゆかりの名前が付けられました。

長野県と山梨県にまたがる金峰山も、その一つ。
「西の大峰、東の金峰」と言われ、東日本における修験道の有名な行場の一つだったそうです。

そこで、
大峰山に続き、金峰山に登拝したいと思っていました。
しかしながら、今回は難ルート。(破線ルート。登山地図上破線で示されるルートで、一般向きでないルート)
以前このルートから登ったことがあるという登山ガイド杣人の三好ガイドに同行いただきました。

三好ガイドと山頂で

金峰山とは

奥秩父山塊にある山で、山頂は長野県川上村と山梨県甲府市、北杜市にまたがります。
標高は2595m(2599m)。
山頂には「五丈岩(ごじょういわ)」という巨大な岩が横たわっています。
天気が良ければ、富士山や八ヶ岳、奥秩父の山々が一望できる大展望の山です。
百名山の一つです。

山頂に鎮座する五丈岩

金峰山の神さま・仏さま

麓の金櫻神社の縁起によれば、
第十代崇神天皇の時代に「少彦名命(スクナヒコナ)」が金峰山五丈岩に祀られたのが始まりだそうです。
日本武尊が東征の折に鎮護国家のため、鎧を納めた霊地として社殿が建立されたそうです。
その後、蔵王権現が勧請され、神仏習合の霊山として信仰されてきました。
金峰山と山頂の五丈岩は、
麓にある金櫻神社(山梨県甲府市三岳町)の御神体です。
(五丈岩一帯も金櫻神社の境内地)
五丈岩に登る方もいらっしゃいますが、御神体であるので登るのは禁止されています。

金峰山山頂 五丈岩にある看板

金峰山 表参道ルート

今回のルートは「表参道ルート」。
金峰山へ登るルートは、大弛峠からのルートか、瑞牆山からの縦走路である富士見平からのルートが一般的です。
今回は破線ルート(登山地図上破線で示されるルートで、一般向きでないルート)である表参道ルートです。

金峰山に至る参拝道は「御嶽道(みたけみち)」と呼ばれ、9つから成っていました。
(今の一般ルートもその中の一つで、古くからの参詣道です)
しかしながら、金櫻神社から登るルートが金峰山登拝の「表参道」だったそうです。
深田久弥の日本百名山にも、バスのない時代に歩いて昇仙峡に行き、
金櫻神社から黒平を経由して登ったと書かれています。

今回は、「アコウの土場(アコウ平)」から入り、
荒川まで下り、途中から表参道ルートに合流し登りました。
登拝した日は土曜日でしたが、
全く人に会わず、静かな山でした。
下山は大弛峠への一般ルート。
さすが土曜日の百名山。たくさんの人でした。

表参道ルートの難所

表参道ルートに合流してすぐの「御室小屋跡」。
昔、登拝する参拝者のお世話をした山小屋で、ここで入山料が徴収されていたそうです。
今では跡しか残っていません。
三好ガイドが昔来たときには、まだボロボロの建物が残っていたそうです。

御室小屋跡を過ぎるとすぐに急登。
キツイ登りが山頂まで続きます。

一番の難所は前半にある「一枚岩の鎖場」。
30mほどあるそうです。
斜度はそこそこなのですが、
谷側に向かって傾斜があります。
鎖をしっかり持ち、ゆっくり登っていけば大丈夫かと思いますが、
濡れていると怖いです。
日陰で濡れているところを踏んでしまい、
あわや滑落の危機でした。

そんなとき、大峰山の行場先達に言われた言葉が頭に響き渡りました。

「絶対に鎖を離すな!離したら死ぬぞ!!」

大峰山の修行の成果があったのかなと思いました。
このルートに挑戦される方、
しっかりと鎖を持って登ってくださいね。

表参道ルート一番の難所 鎖場

登拝を終えて

金峰山、初めて登ったのが学生時代の奥秩父縦走でした。
登山を再開してから、瑞牆山から縦走。
3回目の金峰山でした。
素晴らしい山なのは存じていましたが、
今回の「登拝」としての金峰山は、
全然違う感覚がありました。

表参道ルートは、遠くに見えていた山頂の五丈岩がどんどんと近づいていきます。
樹林帯を抜けて、風景も変わっていきますし、
神域に入っていくような感覚がありました。
そして、大峰山での修行を終えてからの登拝でしたので、
かつて金峰山を開いた修験者たちが何を思い、何を感じ、
この山を開いたのか。
その気持ちに重なっていくような登拝でした。

難しいルートではありますが、
ぜひ金峰山への「登拝」、なさってみて下さい。

小雪童

この記事を書いた人

syousetsudou